ベテランスノーボーダー、丸山隼人
丸山隼人、バブルスさんはスノーボード暦が25年という大のベテラン。数々のスノーボードシーンを見て来て、確かな考えを持ってスノーボードと向かいあう。そんなバブルスさんに、フリーランと八甲田について聞いてみた。
Photographer Hi-see
━━━バブルスさんはスノーボード初めて何年目ですか?
- 87年からだから次の冬で25年。四半世紀だな(笑)
━━━最初はどんな感じでスノーボードをしてたんですか?
- やり出した時はゲレンデを滑るだけだよ。最初のお手本はバートンのビデオだったか。タイトルは忘れた。それからSIMSの「snow shredders」「snow daze」なんかを見てた。始めて間もなく、見てたビデオの影響もあってジャンプしたくてやってたね。最初に買ったボードは、リフトに乗ったら板の重さで、足首が取れそうな位重かったけどそれでも無理矢理飛んでたよ。ギャルメソで。
Photographer Tochi
- 初めてパイプのエキシビジョンがあったのは妙高だった。89年、昭和最後の年。本当はパイプを作りたかったんだと思うんだけど、多分作れなかったんだろうね。ハーフパイプというより、クォーターパイプが4つ続いてるみたいな感じだったな。フロントに2つバックサイドに2つみたいな感じで。当時は、手間的にもそれが限界だったんだろうね。手掘りだし。
━━━バブルスさんはボーダークロスのコースを作ってたとお聞きしましたが。
- AVALANCHE時代の先輩のダミアン・サンダースがやり出したんだ。八幡平リゾートで。その後日本に、ダミアンがモトクロスっぽい格好して、ボーダークロスのプロモーションを仕掛けて来たんだ。それで公式(?)の団体が出来て、JSBAも含め気がついたらいろんなボーダークロスの大会があって、手伝わないかって話が来たんだよ。それからかな。暫くするとコース作るのに資格制度になって、それないと公認コースは作れないみたいな。だんだんそれで仕事したい人が増えていったよね。つまらないコースも増えていったけど。
━━━当時は、ボーダークロスを作っている時以外は、フリーランをしていたんですか?
- そうだね。
━━━フリーランの面白さってバブルスさん的には何処にあると思いますか?
- フリーランが面白いっていうか、スノーボードってフリーランじゃないのって思ってるんだけど、結局。んー…フリーランの面白さね。何だと思う?いっぱいあるよな。感覚的な話をすれば、スピード、疾走感、重力の遊び。自分が何したいかにもよるけど、ピステンが良ければカービングが気持ちいい。落差があれば、落ちる時にビビったり、突っ込んだりっていう選択の楽しさもあるし、好きな地形でドキドキ出来るよね。自然を感じながら滑る、そうゆう遊びが出来るのがフリーランじゃない。みんなでセッションするのも楽しいし、自然や自分、モラルとかルールと向き合って色々な選択を迫られて楽しめる。子供の頃の冒険遊びと一緒。純粋にそこに行く事だったり、その場所にいる事だったり、あと誰が一番○◯か?とかね。そういう遊びだよね。命のかかった冒険となるとまたその先だね。
Photographer Hi-see
━━━フリーランは技術とは違う所で得られるモノってありますよね。
- それはあるよね。でも、ひっくり返すようだけど、技術がある事で見れる世界があるのも事実。
━━━なるほど。では、どうすればフリーランが上手くなりますか?
- 自然でもゲレンデでも何でも良いと思うんだけど、例えば取り組み方だと思う。常に流す滑りってのも、アドリブと言うかスピードを伴った対応力がついて上手くなるよね。でも、より練習らしく1つの決まったセクションや地形で、そこで出来る技や滑りをひと通りやり込むってのもある。その両方合わせたら結構上手くなるよ。その場合、ひとりで黙々と滑るっていうのが好きな人もいるだろうけど、
- 出来れば誰かと一緒に滑って、見せつけたり見せつけられたりして刺激を受ける事が望ましい。先輩が一緒だと尚良いね。ルールやマナー、価値観を高める事が出来るからとても大事。ただ上手いだけじゃ無く、どう上手いかが身に付くから。あとはやっぱりイメージかな。頭の中と現実を近づけると良い事あるよ。
━━━バブルスさんが今プロデュースしている八方尾根スキー場も
仲間で滑れて、更に様々なフリーライディングを提案をしていますよね。
- あれはいろんな事をあそこにぶち込んでいるんだけど、スノーボードやスキーの持ってるポテンシャル、滑り方、遊び方の可能性を引き出したくて、考える限りいろんな事を形にしてみたいと思ってる。トレインと呼ぶセッション的な絡みでも、安全で刺激的なスピード感で、気がついたら永遠にリフトをぐるぐる回してしまう様な地形を作りたい。程良いリラックスもあるといいよね。
バブルスプロデュースの八方尾根スキー場のスノーパークPhotographer Yoshiro Higai
━━━今バブルスさんが作っているパークは、何処のセクションをどう滑って行くかという、 1本の滑りを組み立てていく要素がありますよね。
- そうだね。上級者さん向けにはそういうところがあるね。そうゆう所を目指して作っているし、一個の技やアクションのその後が繋がらないと気持ち良く無いみたいな、そういうのに気付けるパークしたいと思ってる。いろんな滑り、いろんなラインが組み立てられるよっていうパーク、ライディングそのものの楽しさを知ってもらえるパークでありたいと思ってるよ。
━━━さて、話を八甲田に絞って行きますが、八甲田は何回も滑りに来てるのですか?
- 今回で4、5回目くらいかな。初めて来たのは90か91年だな。
初めての八甲田。後ろ左から2番目バブルス
- 全然。地元のショップ(MELLOW'S)の先輩に連れてってもらったんだよ。それで、青森の知り合いの人と合流して滑る予定だったんだけど、最初は合流出来なかったんだよな。当時携帯電話も無いし、会えなくて俺らだけで滑った。そしたら1本目で気持ちいい方に滑って行っちゃって、今思うと何処なのか分かるんだけど、その時は知らない所を無防備にどんどん滑っちゃって、だんだん斜度が緩くなってくるし、雪深いし、気づいたら俺が先頭で、後ろ振り返ったら誰もいなかった。もうね、半泣き。(笑) 静か過ぎるし、多分行きの車で脅されて、雪中行軍どっち、こっち?みたいな感じになって。少し時間が経ってから仲間が降りて来たけど、俺はその時点でもう止まってて。このまま降りて行っても進めない感じ出てるし、板脱いだら胸ラッセル。滑ってきたトラックを使って戻ろうって事になって、事なきを得たんだけどな。それでその後も何回かロープウェーに乗ったと思うけど、最初の冒険的な勢いはもう無かったよ。(笑)
━━━天気はどうだったんですか?
- まぁ、間違いなく晴れではなかったね。
━━━1回目から衝撃的な体験ですね。
- そう。その時も怖かったけど時間が経ってから本当に怖くなったよ。雪山でハマったりって何回かやってると、自分の体力や生命力みたいな限界とかちょっと見えちゃうし、助からないかもって時のイメージが段々リアルになるっていうか。川に落ちるって事もあるし。あのエリアの奥深い怖さっていうかね、アルプスとかそうゆう怖さじゃない、違う厳しさがある。そうゆう事が感じられる山っていうのでも、あそこはいい山だね。鋭角な山とかの「オリャー」ってのじゃ無い、静かに緊張して興奮するタイプ。後は、斜面とかの以前にあそこは自然がいいよな。ブナ林も含めて温泉とか。裏の方には奥入瀬とかさ。いいよね。2回目行った時は春だったから新緑のトンネルだったんだよ。あれはヤバかったな。
━━━八甲田はどんな印象の山でしたか?
- 山はね、タイトル通り風と樹氷だね。同じ様な風の地形、樹氷は他にもあるんだけど、あそこまで複雑に数多く連続して地形を作り上げてる山はそうは無いだろうね。真っ向から樹氷地帯に入り込むと、ホント迷路の様でね。楽しいねあれは。そしてユルくて長い森を抜けて帰ってくる感じ。足はパンパンだけどね。
━━━あそこは山の周辺が良いですよね。
- 旅情をかきたてるね、たまに異国とも思える程。それが八甲田に行っていいなって思える所だよな。今の日本中、郊外や田舎まで建物的に景色が並列化してるでしょ、いつも見る店とかさ何処も同じだったり。でもちゃんと奥の方に行くとさ、良い意味で田舎のままというかね、興味無いヤツにはつまらないって思うかもしれないけど、俺らくらいの歳になるとコレが大事って思う訳じゃない。それは旅人の勝手な思いかもしれないけどな。でも、スノーボーダーは旅をするのが基本的な事でもあるし、そこへ行くための理由を持っている訳だから、雪のある日本のいろんな所へ行く、そこが醍醐味だよね。何がいいかはそれぞれ決めてって感じで、とにかくどこでも行く事だな。
━━━最後に八甲田に行ってみて、バブルスさんにとって八甲田はどんな場所でしたか?
- また来たいだと月並みだから、言い過ぎかもしれないけど、あそこへ帰りたいぐらい言えそうな、そう思ってしまう場所だな。なんとなく。人が多くなって来てるとは思うけど、あのままであって欲しい山。慌てて行くんじゃ無く、向かう時も離れる時もゆっくりしていたい。いろんな守り方もあるだろうけど、あの雰囲気のままで在って欲しいと思う。
━━━ありがとうございました。
丸山隼人
新潟県が生んだ、日本スノーボード界レジェンドライダーの一人。彼のプロデュースするスノーボウルのパークは、世界からも注目される。流れのあるライディングは唸るほど美しい。2010年の撮影に参加。
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