Interview

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青森に住むアメリカ人のポールさん

ポールさんも八甲田に魅せられた一人である。青森県三沢からはるばる2時間かけて八甲田にやってくる。八甲田に訪れる海外の人達を相手にガイドをし、日本の学校では英語の先生もする、メロウな心をもつスノーボーダーである。そんなポールさんに八甲田の魅力を聞いてみた。

ポールさん

 

━━━ポールさんの出身とスノーボード歴を教えて下さい。

  • 出身はアリゾナ州です。スノーボードは、17歳の学生の時にアリゾナのスノーボールというスキーリゾートで始めて、16年が経つかな。

━━━アリゾナの雪はどんな感じですか?

  • アリゾナはパウダーが稀にしか降らなくて、ストームで雪が降っても、その後晴れが2週間位続くから、新雪はあっという間に無くなっちゃうよ。雪が1回降ったらパウダーを滑りたくても、次のストームを待たないといけなくて『いつもフレッシュパウダーを滑りたい!』って思ってたね。アリゾナからはその後出て、カリフォルニア・サウスレイクタホの、ヘブンリースキーリゾートでパトロールをしてた。そういえば、そこで働いてた時に凄い大きなストームが来て、24時間で雪が1.5m積もった時があったんだ。僕のスノーボード人生の中でトップ10に入る最高の日だった。そこで1年間働いた後、仕事を変えてロサンゼルス近くのビーチに引っ越したんだ。その時はロスに2店舗あるオークリーショップのマネージメントをする仕事をしていたよ。海が近かったから、毎朝仕事前にサーフィンしてね。(笑)その店で3年間働いて、次にBurtonがロスにフラッグシップストアをオープンさせるって聞いて、応募したんだ。幸運にも僕は、その店のスノーセクションのマネージャーに成れた。スノーセクションの売り上げは、店の75%だったから、デカイ仕事だったね。
 
アメリカでのポールさん
━━━その時もスノーボードはしていた?
  • もちろん。やマンモス、ナイターだったらビックベアに行ってた。日曜日は、早く店を閉めて。(笑)
  • その時は、人工降雪機で作るようなパークしか滑れない環境だったから、パークに入っている事が多かったかな。でも、パウダーを滑りたくなったら、サウスレイクタホのカークウッドやシエラに行ってた。シエラは面白いスキー場だね。風から守られているような地形の場所にあって、デカイ木の間や、マッシュがいっぱいあるんだ。
アメリカでのポールさん

 
━━━青森にはいつ来たんですか?

  • 青森は、ロサンゼルスで働いて、その後北カリフォルニアに、メーカーの人として試乗会や営業の仕事で住んで、その後かな。5年前。

━━━青森へはどんな理由で来たんですか?

  • 妻が歯医者なんだけど、軍の基地で働くって応募したんだ。その赴任先を決めるための"ドリームシート"って紙があって、そこに希望先を三沢って書いて、ラッキーな事に三沢に来れたんだ。
 
ポールさんのファミリー

ポールさんのファミリー

━━━なんで三沢だったんですか?
  • もちろんサーフィンもスノーボードも出来るから(笑)後、大きな町は好きじゃないんだ。元々三沢は妻の提案でね。ちょうどその時、子供が生まれるって時で、子供を育てるなら、自然がいっぱいある土地がいいだろうって。候補地を決める時は2人が100%納得するまで相談したよ。その後は、グーグルマップで三沢から八甲田の距離とか調べたりしてね。(笑)

━━━それまで日本は滑った事が無かったんですか?

  • 三沢に来るまで日本で滑った事はなかったよ。映像では見てたよね。スノーボードビデオの"イン ショート"や"ニール・ハートマンの"カー団地"。日本へ来る事に凄い興奮してたね。でも、1番楽しみだったのは、サーフィンやスノーボードが出来るって事もあったけど。日本という違う文化に触れられる事。
  • どの位日本に居れるのか分からないけど、違う文化に触れられるって事が凄いうれしかったね。

━━━それで、初めて行った時の八甲田の感想をお聞かせください。

  • 初めての八甲田の感想は『最高!』だった。冬の初めだったからコースがオープンしたばかりで、ダイレクトコースしか開いてなかったけど。どれだけの雪が降って、どんな感じになるのか想像しただけで楽しくなっちゃった。『あっちにも行ける!こっちも良いな!』ってね。(笑) 滑った直後にはまた来るって確信してた。

━━━ポールさんは八甲田のどんな所に引かれたんですか?

  • 今は、八甲田で滑っている人達が好き。僕はローカルをリスペクトしてる。八甲田のローカルの輪は、一見入りにくそうだけど、その人達の滑るルートを邪魔しちゃ行けないとか、基本的なルールを守って、敬意をもって接してたら、徐々にローカルの輪の中に入る事が出来たんだ。ローカルの人達が僕を受け入れてくれた事が、凄いうれしかった。
 
八甲田で滑走

 
━━━ 八甲田のローカルって独特な感じがありますよね。
  • はい。今までいろんな所でスノーボードをして来たけど、八甲田のローカル文化は興味深いです。

━━━八甲田以外で、他のゲレンデは行きましたか?

  • ニセコ、安比、奥中山、岩木高原、夏油高原、七戸、ナクアとか面白かった。でも、八甲田が好きですね。今の僕のホームだから。今は『あそこ行けば良い雪が残っている』とか分かるようになって来たし。

━━━八甲田をいっぱい探検してるんですね。

  • 毎回アドベンチャーしてます(笑)

━━━ポールさんが思う八甲田とアメリカの山の違いって何でしょう?

  • アメリカのスノーリゾートは整備され過ぎています。ハイスピードのクワッドリフトで、色々な山のピークまですぐアクセス出来る。圧雪は奇麗、レストランもあって、山の麓にはショッピングモールがあるみたいな。全てが整備されてます。安比やニセコもアメリカっぽいよね。でも、八甲田は自然そのものを滑れるって所。ワイルドだし。八甲田はいつも雪のコンディションが違う。そこが好きです。ダイレクトコースでも風で地形が変化するし、初冬、厳冬期、春と、変化し続けるって山が面白いよね。僕はこの山にチャレンジしてる。

━━━ポールさんは海外の人相手に、ガイドをされてますよね。

  • はい。
 
Japow Tours Guide風景

Japow Tours Guide風景

━━━それはなんで始めたのですか?
  • それはね、基地に居るアメリカ人が、いっぱい遭難するからなんです。本当の事だよ。かってに色々な場所を滑ったりしてね。もちろん海外から来る人もね。基地の中ではこれから行くっていう人に、もちろん危険な事もあるって伝えています。僕のガイドする人達は、こんなに深い雪を滑った事が無いんです。だからいっぱい滑りたいとか、色々な場所に行きたいって思っている人が多くて、僕のガイドの仕方はずっと滑っているから、彼らのニーズに合っているんだろうね。

━━━どんな感じでガイドされているんですか?

  • ガイドはお客さんが3人まで、後はずっと滑ってます。僕のガイドする人達は、こんなに深い雪を滑った事が無いんです。だからいっぱい滑りたいとか、色々な場所に行きたいって思っている人が多くて、そういう意味では彼らのニーズに合っているんだと思う。

━━━滑ったお客さんの反応は?

  • 『いいね!』『また絶対来るよ!』ってほとんどの人が言うよ。この前ガイドしたスウェーデンの人は、最初『何処行くの?』って恐る恐るだったけど、滑ったら1日楽しんで帰って行ったよ。貴重な体験をしたみたいだよ。

━━━最後に、ポールさんにとって八甲田はどんな場所なのか聞きたいんですけど。

  • 八甲田は僕にとって、来てみて凄いラッキーな場所だった。僕はあまり教会に行ったりしないけど、八甲田に行く時は教会に行く気分かな。日常生活をすべて忘れる事が出来る場所。後、八甲田のローカル文化は、僕が行った何処のスキー場よりクール。八甲田には不思議な力があって、山から出たらすぐに八甲田に呼ばれるんだ。『戻ってこい』って。(笑) この前、山から1ヶ月間離れた時があって、いつも行きたいって思ってたよ。そしてまた明日も行くよ。

━━━ありがとうございました。
 

英語翻訳 向井栄作
ポールさん

ポールさん Paul Vanderheiden

2013年の夏ポールさんは奥さんとアメリカへ戻りました。
なので、今はガイドはしていません。
 

ポールさんがガイドをつとめていたJapow Tours