Interview

都会から八甲田山へ通う Qooさん

クーさんは東京から八甲田に通う、八甲田好きのスノーボーダー。10年以上前に初めて八甲田に訪れ、魅せられた一人である。都会で働く彼女が八甲田に魅せられた理由と、今や青森からイベントを起こす事になった、彼女が関わる"八甲田ガレージ"について聞いてみた。

クーさん

━━━Qooさんは八甲田に通い始めて10年くらいとお聞きしましたが?

  • 10年以上。私がBurtonで仕事し始めてからだから、12〜13年くらい。

━━━えっ!? Burtonで働いていたんですか?

  • そうなの、その前はずっとロンドンで働いてて。それで子供の頃から、夏は北アルプスの登山、冬はスキーをやらされてたのね。日本では、山に行きたくなったらすぐ行けるけど、イギリスって山がないんだよね。無くなってみると行きたくてしょうがなくて。それで日本に帰って来て、自然に関わる仕事、スポーツに関わる仕事したいなって、それと英語を使っていきたいなって思っていたの。そしたら偶然にもBurton Japanって子会社の立ち上げの時と、私が仕事を探してたタイミングがバッチリ合って。これだって。スノーボードはBurtonがきっかけだったよね。私、Burtonに入るまでスノーボードやった事無くて、もろその時は初心者。

━━━八甲田に来る事になったきっかけもBurtonだったんですか?

  • 最初のきっかけは、Burtonのライダー"クレイグ・ケリー"なんだけど。何年かスノーボードをやって面白いなって思ってた時に、クレイグと話して雪崩の啓蒙活動をしたら良いんじゃないかってなったの。私はその時、通訳としてイベントに付いて行ったんだよね。最初は谷川岳でやったの。でもずっと続けなければ意味が無いし、その時Burtonもバックカントリーのギアを販売していて、売りっぱなしっていうのも不親切じゃない。やっぱり、その教育までもして初めて販売しましたっていう事だと思うし、『それが一連の流れじゃないの』って話をして、『その後も続けましょう』ってクレイグとも話したの。それなら講習をやる上で、クレイグが来る前にロケハンして、山を見つけないとっていうのがあって、谷川岳以外で、何処で講習が出来るだろうって探したんだよね。それで色々探したら、八甲田に相馬さんっていう人が居るって聞いて。『八甲田どんな所か見てみたい』って行ったのがきっかけ。偶然見つけたって言うよりも、相馬さんが居るって耳にして来た感じ。
クーさんがもらったクレイグのサイン

 ━━━それがきっかけで、八甲田にハマっていったんですね。

  • そうそう。白馬とかワイルドな山はあったけども、八甲田に来てエクストリームな、急斜面を降りるばかりが、楽しいんじゃないんだっていうのがよく分かったっていうのもあったし、この山って、スキーやテレマーク、スノーボードも、若い人も、年寄りでのんびり山を登りたい人も、みんな共存してるじゃない。それが凄い心地よかったの。その当時って、スキーヤーとスノーボーダーがにらみ合う、そうゆう時期があったじゃん。当時、スノーボードを100%解放しているスキー場ってほぼ無かったし。そうゆう時に、八甲田はみんな同じ価値観で時間を過ごせてるというのが、とっても心地よくて。みんなこの山を好きで集まってる、それが凄い良かった。そんなこんなでこの場所を知って、それで八甲田マジックに掛かっちゃった。

━━━他のゲレンデは、もう今は行ってないのですか?

  • 今は全然行ってない。他に行く時間と、お金があったらココに来たい(笑)

━━━Qooさんは東京から通いで八甲田に来てますが、どのくらい来てるのですか?

  • 隔週できてます。

━━━交通の手段は?

  • 最初は飛行機で往復してました。八甲田マジックに掛かってからは、もっと行きたいなって思った時に飛行機プラス山荘に一泊したら、週末だけで5万円くらい飛んでちゃうのね。これは無理だろうと。それで安い手段を見つけようと思って探したら、夜行バスを見つけちゃったんですよ。『コレ良いんじゃないの』って思ったのね。(笑)朝7時に着けるし、帰りもまるまる1日滑って、翌日の朝に東京駅着くから、そのまま会社に行けるしって、これは全然時間の無駄ないわって。それ見つけてからはずっと夜行バス。やっぱり回数来たいと思ったら、どっかでお金を節約しなくてはいけなくて、交通費を抑えるのが1番大切だったというか。そしたら今は慣れちゃって、バスの中で心地よく寝てる。

━━━夜行バスって快適に寝れますか?

  • 快適だよ。私の乗ってるバス、ちょっと値段高いのね。片道7500円するのね。独立三列シートなの。プラス、プライベート空間みたいにカーテンも着いてる。だからちょっとした個室なの。例えばさ飛行機のエコノミーで9時間とか結構辛いじゃない。それと比べると私の乗ってる夜行バスなんてビジネスクラスなの。9時間なんて"へ"でもないわ。乗った事の無い人に話すと『9時間ムリー!』っていうけど、あんな快適なものないよ。

━━━バスの中で快適に過ごすためのアイテムって何かありますか?

  • メイク落としシートと、化粧水とかのメイクセット。後、私バスに乗ったら靴とか脱いじゃうから、休憩所で下りる時用の簡易の草履。I-phonと充電用のエネループ。後、耳栓も必要。凄いイビキかくオヤジとか居たら大変。以前寝返りで耳栓の片方無くした事あるから、予備の耳栓も必要。(笑)

━━━ボードはバスに持って行けるんですか

  • ボードは持って行けない。スノーボード、スキー、サーフボード、折りたたみ自転車とかはダメ。

━━━そうなんですね。知らなかったです。

  • でもね、最近バスも人気でちゃって。インターネットで買えるようになってる所もあるから、みんなすぐ取るじゃん。争奪戦が激しい、厳冬期は特に。東京駅で、『あっ、この人見た事ある』っていう人いるもん。バス待っている時に、知ってるこの顔って。向こうも思ってるかもね、またこの人だよって(笑)

━━━八甲田の事をお聞きしますが、この山にどんな印象持っていますか?

  • やっぱり楽しい。来れば来るほど、好きになる山っていうのも珍しいなって思うのね。ここは1本の滑りで、いろんなバリエーションがあるじゃない。樹氷から、ツリーランもあれば、ちょっとしたオープンもあるし、山頂から下まで、景色が劇的に変わっていく山って、結構無いと思う。それでシーズンの頭から終わりまで、隔週にせよ来てれば、季節の移り変わりが凄くよく分かるし、"自然の時間の中に、自分も一緒に流れている場所"っていうのかな。他にも、ここと同じ素晴らしい山って、いっぱいあると思うんだよね。でもここを知っちゃったら、この山しか来たくなくなっちゃうというか、なんなんだろうね。楽しいし全然飽きないの。やっぱり、昔ながらの山スキーっていう、あの頃のクラシックさが今も残っているっていうのが良いよね。伝統が素晴らしいと思う。
 
八甲田を滑走するクーさん

━━━Qooさんはガイドに入っているんですか?

  • 基本的にガイドかな。たまに、こっちの友達とも滑りに行ったりするけど。私一人で来てるから、山荘に居て滑る時はガイドさんと山へ上がって、というのがルーティーンかな。ガイドに入るのって、ひとつに安心だよね。初めての時は無くちゃならない人達だし。例えば、ホワイトアウトで何も見えなくても、彼らがいればちゃんと降ろしてくれる。同じ雪山に彼らは毎年160日以上いる。
  • 凄いよね。後ね、ガイドクラブの彼らを見てると気持ちが優しくなれるというか、みんなゆっくりした優しい人達。私、Burtonで仕事していた時って、凄いカリカリしてて短気だったんだよね。前の仕事の時イヤな奴だったと思う。でも、ここにいるとストレスとか一気に無くなって解放される。そうゆうの、ここのガイドさんの雰囲気にもあるのかも。

━━━Qooさんは八甲田ガレージというイベントにも関わっているそうですが。去年から始まったとお聞きしたのですが?

  • 去年、震災があったよね。震災の後、何週間も青森行けなくて、やっとJALが飛んで青森に来たの。で、びっくりしたのが、誰一人としてお客さん居なくて、ロープウェーもガラガラ。ここの人達にとって、ゴールデンウィークまでの収入って凄い大きいじゃない。ここは直接的な被災地じゃないけど、レジャー自粛で二次被害受けてたの。それでここも被災地だなって。それで、お客さんを呼びたいとは思っても、私一人でどうにか出来る訳でもないし、何か出来ないかなって考えたのね。私は、青森のために何かしたいって思ったの。
 
2011八甲田ガレージ

八甲田ガレージ2011ライブ風景


 
━━━そうして始まったのが八甲田ガレージなんですね。 イベントは上手くいきました?
  • それが大雨。ドッシャ降り(笑)

━━━(笑)今年は晴れると良いですね。

  • 本当に。私が、この青森にのめり込んで行ったのもこの山だから、恩返しをするのであればこの山に関わる事したい。八甲田ガレージも市内ですれば、もっと人来ると思うんだよね。でも、普段山に上がって来ないような人達が、これをキッカケに八甲田に足を運んでくれるような、私たちにしかできない、魅力的なイベントにしないといけないなって思ってる。

━━━最後に、Qooさんにとって八甲田はどんな場所なのか聞きたいんですけど。

  • 八甲田は酸素カプセル。(笑)リフレッシュ出来るし、パワー充電出来るし、リラックス出来るし。もう体の隅々まで酸素運んでくれるような、不純物もぬぐい去るデトックス効果もある、最高のエステじゃない。(笑)

━━━(笑)ありがとうございました。今年の八甲田ガレージ楽しみにしています。